タムナヴーリン レッドワインカスクエディション フレンチ カベルネソーヴィニョン カスクフィニッシュ

シングルモルト
契約上の理由もありますが、ボトルには「フランス産カベルネ・ソーヴィニヨン赤ワイン樽仕上げ」とだけ書かれています。
最終的な味わってほしいという理由もあってどのシャトーのどのワインが使われていたかは…秘密なんですって。

スペック

名前タムナヴーリン レッドワインカスク エディション
フレンチ カベルネソーヴィニョン カスクフィニッシュ
タイプシングルモルト
地域スペイサイド
製造元タムナヴーリン蒸留所
熟成樽カベルネソーヴィニヨン赤ワイン樽
アルコール度数40度
容量700ml
購入時価格4,400円(税込)

飲むたびに印象が変わる、それでも最後に残るのはフルーティー余韻

スコットランド スペイサイド地方の中心、リベット川沿いに位置するタムナヴーリン蒸留所は、1966年の創業以来、時代背景に左右されながらも着実に歩みを続けてきました。
もともとはブレンデッド ウイスキー向けの原酒を供給するために建設されましたが、1995年にはウイスキー業界の不況の影響を受けて一時的に閉鎖されました。

しかし、2000年には再び蒸留所に火が灯り、2007年には大規模な改修、2010年にはスチル(蒸留器)の形状を変更することで、現在の“甘く、果実味豊かで滑らかなスタイル”へと進化しました。

2016年、創業50周年を迎えた年に、シングルモルトとしての本格展開を開始。
タムナヴーリンは“カスク エディション”シリーズを通じて、世界中のワイン樽や酒精強化ワイン樽を活用した独自の表現で、シングルモルト界に新風を吹き込んでいます。

「タムナヴーリン レッドワインカスク エディション ― フレンチ カベルネ ソーヴィニヨン カスク フィニッシュ」は、2019年に始まったレッドワインカスクシリーズの中でも注目の1本です。
タムナヴーリンらしい親しみやすく柔らかな原酒を、フランス産のカベルネ ソーヴィニヨン赤ワイン樽で追熟することで、上品で華やかなニュアンスをまとわせています。

このウイスキーは、まずアメリカンホワイトオークのファーストフィル バーボン樽で熟成されたあと、ワイン樽でフィニッシュされます。
ワインの風味とウイスキーの個性を融合させる技術が、シリーズの大きな魅力となっています。

このシリーズには他にもピノ ノワールやグルナッシュ、さらにはポートワイン樽仕上げの表現も展開されており、タムナヴーリンの挑戦的な姿勢が伺えます。

ワイン樽熟成ウイスキーの人気が高まる中、タムナヴーリンはその先駆けとして高い評価を得ています。
特にフレンチ カベルネ ソーヴィニヨンの赤ワイン樽は、ブラックカラントやプラム、スパイス感のある重厚な特徴を持ち、それがウイスキーに繊細かつ明確な香味のレイヤーを加えます。
このボトルは、スペイサイドの伝統的なスタイルとワインの個性が交差する「静かな冒険」とも言える存在です。
ワイン好きの方にとっては、モルトへの入り口となり得る1本でしょう。

「タムナヴーリン レッドワインカスク エディション ― フレンチ カベルネ ソーヴィニヨンカスク フィニッシュ」は、スペイサイドの伝統とフランスワインの気品が織りなす、モダンなシングルモルトです。
シングルモルトの世界において、ここまで果実味と飲みやすさに振り切ったシリーズは稀有でありながら、ウイスキー本来の品格を失っていない点にこそ、このボトルの魅力があります。
ウイスキーとワイン、どちらのファンにとっても楽しめる“橋渡し”のような存在と言えるでしょう。

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飲んでみた感想

香り

まず感じたのは、「箱詰めのりんご」のような香り。
あの、藁のような緩衝材と一緒に詰められたリンゴの、ちょっと乾いた木の香りがします。
ちなみに、あの藁のような素材は「木毛(もくもう)」というそうですよ。
その木毛と一緒に、オレンジがいくつか入っているようなイメージも重なります。
そして、どこかで焚かれているお線香の煙のような香りもほのかに漂います。

ストレート

口に含んだ瞬間、塩味 辛味 苦味の三拍子がテンポよく現れます。
アルコールの刺激もそこそこ強め。
他のお酒で例えるなら、そば焼酎のような素朴な風味も感じられますし、ややブランデーのようなリッチさもあります。
余韻には甘味も感じられますが、全体的には辛口。
2口飲んでしばらく経つと、甘味とともに喉に残るアルコールの刺激が印象的です。
不思議なのは、飲んだ直後は「辛口」だった印象が、時間が経つと「甘口だったかも?」と記憶が上書きされること。
なんとも奥行きのある味わいです。

加水

まずは少量の加水から。
酸味がぐっと立ち上がり、熟しきっていない青りんごや、マスカットのような爽やかさ。
さらに、キウイの皮付近のようなライトな苦味が感じられます。
天然塩のような塩味も健在で、その奥にわずかに甘味が潜んでいます。
アルコール感は穏やかになり、口当たりもまろやかに。

さらに加水してトワイスアップにすると、酸味が強調され、苦味が後を追ってきます。
甘味は控えめになり、少量加水のときよりもシャープな印象。
ただし、アルコール感は薄まり、飲みやすさは保たれています。
ストレートでは余韻に甘味が残りましたが、トワイスアップでは酸味が主役として長く続きます。

オンザロック

まるで“濃縮した赤ワイン”のような味わいです。
ブランデーのような重厚感ではなく、あくまで赤ワインが凝縮されたイメージ。
冷やすことで甘味が引き立ち、塩味 酸味 苦味 辛味のバランスも良く、ウッディなニュアンスも加わります。個人的には、非常に好みのスタイルでした。

水割り

「辛口の赤ワインに氷を入れたらこうなるのでは?」という印象。
甘味は控えめながら、フルーティーさはしっかりとあります。
味わいを一言で言い表すのは難しく、「なんとなくいろんな味がするな」と感じます。雑味と捉えるか、華やかさと捉えるかは好みによるでしょう。
僕自身は「どっちとも言えない」中間派です。

ハイボール

まさに“赤ワインソーダ”といったフルーティーな味わい。
甘味と酸味がはっきりとしていて、非常に飲みやすい仕上がりです。
水割りでは控えめだった甘味が、ソーダで割ると一気に前面に出てきます。
後味にほんのりと苦味がありますが、ソフトドリンクのような軽やかさで楽しめます。

ウイスキーミスト

甘味 塩味 酸味 苦味が絶妙なバランスで共存し、何とも言えないおいしさ。
ジューシーな飲み口で、後味にはリンゴをかじった後のような爽やかさがあります。
余韻にはフルーティーな酸味が長く残りますが、それは柑橘やぶどうなど特定のフルーツではなく、さまざまな果実の酸味が混ざり合ったような、複雑かつ華やかな印象です。

総評

あくまでも個人的な感想ですが、このウイスキーはハイボールやウイスキーミストといったソーダ割りでその魅力を最も発揮する一本だと感じました。
おいしかったので、常温よりも冷やした方が楽しめるタイプかもしれません。
そう考えると、水割りだけが少し異質な印象を残しました。
以前、同じレッドワインカスクの「ジャーマン ピノ ノワール フィニッシュ」を飲んだ際には、「トワイスアップや水割り、ハイボールでは少し物足りなかった」と記録しており、今回は正反対の感想になったのも興味深いところです。
同じ“レッドワインカスク”でも、ここまで味わいが変わるのかと驚かされました。
今後、スパニッシュフィニッシュも含めて、3種の飲み比べができれば面白いですね。

甘味

4.0

酸味

5.0

苦味

4.0

辛味

5.0

燻味

3.0

塩味

5.0

刺激

4.0

コク

5.0

お気に入り度

8.0

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